君侯をバイエルン啓明結社に招き、ヴァイスハウプトの専制的指導に歯向かったクニッゲ

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西暦1,782年7月16日
此の日から同年9月1日に掛けて、ヴィルヘルムスバートにて、延期となっていた国際フリーメイソン会議が開催される。会議の回数は36回に及んだ。カール・ヴィルヘルム・フェルディナントの号令により招集された。バイエルン啓明結社は、此の会議に以下2名を派遣した。
①ヴェッツラー(現在のドイツのヘッセン州)の帝室裁判所司法官試補フランツ・ヴィルヘルム・フォン・ディトフルト(イルミナティの秘密の名:ミノス)
②アドルフ・クニッゲ
ディトフルトは、アダム・ヴァイスハウプトの支持を背景に、会議中、ストリクト・オブザーバンツの擬似宗教的要素を攻撃し、此れを完全に破壊する主旨の演説を行った。参加者は、ディトフルトの演説を、反キリスト的・扇動的であると非難し、演説内容の撤回と信仰告白の提出を要求された。ディトフルトは此れを拒否すると、会議参加資格を剥奪され、会期途中でヴィルヘルムスバートを去った。一方クニッゲは、此の会議の準備期間中に、ストリクト・オブザーバンツが抱える問題の根源に、沈黙の誓いの内容が、内なる結社のメンバーに共有されず、コンセンサスが得られていない事が有ると考えていた。其処でクニッゲは、其々の位階に活動領域を定め、神秘的研究には専門の「研究級」を作って独立させ、内なる結社から切り離す事等を骨子とする改革案を作成した。此の改革案はカール・ヴィルヘルム・フェルディナントに評価され、クニッゲはフェルディナントからフリーメイソン会議への正式参加を要請された。しかしクニッゲは、メンバー間の派閥や利害関係からフリーメイソン会議での改革案の実現は困難であると考えていた。超流派のフリーメイソン全般の諸問題を扱う事が構想されていたが、ストリクト・オブザーバンツを除く、他の高位階制フリーメイソンやイングランド・フリーメイソンが参加しなかった為、ストリクト・オブザーバンツを改革によって崩壊の危機から救う事が目的となった。以下が議題に挙がった。
①バイエルン啓明結社の真の起源と目標
②ストリクト・オブザーバンツの聖堂騎士団伝説の正当性の検証
③ストリクト・オブザーバンツの知られざる上位者の実在性の検証
④儀礼の改良
⑤バイエルン啓明結社の国家の支配秩序との関係
⑥バイエルン啓明結社の世論との関係
⑦オカルト的知識の秘匿と合理的なバイエルン啓明結社組織との整合性
結論として、ストリクト・オブザーバンツの知られざる上位者の存在は公式に否定され、従来の制度に代わるフリーメイソンの在り方に就いては、意見が統一出来なかった。延命策として、リヨン(現在のフランスのメトロポール・ド・リヨン県)を本拠地とする「聖都市の善き騎士」の高位階制を採用する事が決議された。しかし、時間と共に聖都市の善き騎士の高位階制を採用するロッジは急激に減少し、本来の役割を果たす事は出来なかった。結局クニッゲは、会議其の物には出席せず、フランクフルトのイングランド・ロッジに於いて此の会議の決議に失望したフリーメイソン会員を個別に勧誘する手法を採った。クニッゲはディトフルトを「思慮に欠けた熱意で、場所を選ばずに見境無く理神論を鼓吹する。此れはフリーメイソン会員をバイエルン啓明結社に引き入れる上で最悪の行動だ」という主旨の批判を展開した。ストリクト・オブザーバンツの崩壊をバイエルン啓明結社に利するべく活動した点で、ディトフルトとクニッゲは共通していたが、アプローチは此の様に大きく異なっていた。クニッゲは、ヴァイスハウプトの専制的指導に制限を加え、共和主義に移行させる事を内に秘め、ストリクト・オブザーバンツの指導者に対する勧誘を行なっていた。又、ヨハン・ヨアヒム・クリストフ・ボーデも、ザクセン・ゴータ・アルテンブルク公エルンスト2世の代理で此の会議に参加した。以降ボーデは、クニッゲと並んで、北ドイツ・中部ドイツに於いて、熱心なバイエルン啓明結社の活動家となった。クニッゲは、ボーデの協力を得て、北ドイツのフリーメイソンロッジに対して勧誘活動を続け、以下2名の勧誘に成功した。
①カール・ヴィルヘルム・フェルディナント
②カール・フォン・ヘッセン・カッセル
此の動きに対してヴァイスハウプトは、自身の地位が脅かされる危険性や、君主と国家が不要な体制の実現を掲げていたバイエルン啓明結社の理念に反する事から、管区長に対する訓令の際「君侯の入会は極力避けるべき」と批判し、仮に入会したとしても、政治的最終目標の開示対象となる司祭には昇進させない様指示した。更にヴァイスハウプトは、以下を理由にクニッゲに対する批判を強めていった。
①クニッゲの作った位階は政治的狂信である
②クニッゲの担当管区は混乱しており、下部結社員の統率力が欠如している

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